10月4日(土)活動報告会開催!「お金だけじゃない」貧困支援の最前線で見つけた、私たちが本当に知るべき4つのこと

目次

はじめに

「貧困にある子どもたちへの支援」と聞いて、みなさんはどんなことをイメージしますか? 多くの方は、お金や食料を届けるといった、物質的なサポートを思い浮かべるかもしれません。もちろんそれも大切ですが、実はもっと奥深くて、複雑な課題が隠れているような気がしませんか?

先日、認定NPO法人 子ども未来では活動報告会を行いました。 会場で語られたのは、現場スタッフ、親子、そして支援者の方々の「生の声」。そこから見えてきたのは、私たちが普段「支援」とひとくくりにしている言葉の裏にある、驚くほど人間味にあふれたリアルな姿でした。

今回は、その報告会を通じて私たちがハッとさせられた、「子どもの貧困について本当に知っておくべき4つのこと」をシェアしたいと思います。

その1 体験の格差と心の孤立

「焼肉の頼み方がわからない」–貧困が生む、見えにくい”体験の格差”

報告会で耳にしたあるエピソードが、私の心に深く刺さりました。 それは、スタッフが支援している子どもを初めて焼肉屋に連れて行ったときのこと。その子はメニューを見ても、どうやって注文すればいいのかわからず、戸惑ってしまったというのです。

貧困が奪うのは、進学や留学といった「人生の大きな選択肢」だけではありません。 友達とカフェでお喋りをする、家族で旅行に出かける、外食を楽しむ。そんな、私たちにとっての「当たり前」で「ささやかな」日常体験さえも奪ってしまうのです。こうした経験の積み重ねこそが、子どもの世界を広げ、自信やコミュニケーション力を育てるはずなのに。お金がないということは、こうした成長の機会から、知らず知らずのうちに置いてきぼりにされてしまうことでもあるのです。

問題は、経済面だけではありません。 ある中学生は将来の夢を聞かれ、こう答えました。「田舎で一人、静かに暮らしたい」。 その言葉の裏には、家の中で絶えずいがみ合う家族の姿がありました。本来いちばん安心できるはずの家が、心休まらない場所になってしまったとき、子どもは未来への希望を持てなくなり、心を閉ざしてしまいます。

この「体験の格差」と「心の孤立」。 目に見える貧しさよりもさらに深く、子どもの心に影を落とすこの問題に、子ども未来は「勉強」と「人とのつながり」の両面から向き合っています。

その2 “三方よし”の支援モデル

「塾が3割、NPOが3割、親が4割」–みんなが当事者になる”三方よし”の仕組み

「子ども未来」が行っている学習支援には、他にはないユニークな仕掛けがあります。 それは、地域の大手学習塾と手を組み、子どもたちが通常の「6割引」という価格で塾に通える制度をつくったこと。

その費用の分担方法は、授業料全体の3割を塾が負担(割引)し、3割を「子ども未来」が寄付金から出し、残りの4割は親御さんが支払う、というルールになっているのです。

「支援が必要な家庭からお金を取るの?」と思われるかもしれません。 でも、これこそが一方的なサポートにはない、「三方よし」の秘訣でした。 親御さんが少しでも費用を負担することで、「支援してもらって当たり前」ではなく、「自分たちも一緒に子どもの未来をつくるんだ」という前向きな覚悟が生まれます。 塾、NPO、そして家庭。それぞれが責任を分かち合うからこそ、みんなが当事者として本気になれるのです。

ちなみに、「子ども未来」が負担している支援金は、すべて個人や企業からの寄付でまかなわれています。

けれど、この仕組みも実は入り口に過ぎません。 本当の狙いは、支援を通じて、その先にある「温かい関係性」を築くことにあるのです。

その3 親子との関係性を築く

「あなたは一人じゃない」–お金以上に大切な、”心のつながり”

経済的な支援や勉強のチャンスも、もちろん大切です。でも、「子ども未来」が何より大切にしているのは、親子とじっくり「関係性」を築くことでした。

その象徴ともいえるのが、年に3回、子どもと親御さんそれぞれと時間をかけて行う「面談」です。 これは、単なる成績チェックの場ではありません。 たとえば、反抗期の子どもとの関係に悩むお母さんがいたとき、スタッフが間に入ることで、感情的にならずにお互いの本音を話し合えたことがありました。 日々の悩みや喜びを分かち合い、信頼を深めていく。そうやって、親子の「心の寄り所」になることを目指しているのです。

報告会でマイクを握ったお母さん、Yさんの言葉がとても印象的でした。 離婚後、深い人間不信と孤独感に苦しんでいた彼女は、スタッフとの面談を重ねる中で、こう思えるようになったそうです。

「自分は1人で子育てしてるわけじゃないんだって、心から思えるようになりました」

この「一人じゃない」という感覚こそが、困難を乗り越える一番の力になります。 そしてこの絆は、卒業してからも途切れることはありません。ある卒業生はこう語りました。 「普通の子は仕事がうまくいかなくても実家に帰れる。でも僕には頼れる実家がない」 彼らにとってここは、単なる支援団体ではなく、いつでも帰れる「もう一つの実家」。まさに心の命綱のような場所なのです。

さらに最近では、レオ財団の協力で基金を設立し、親御さん自身の資格取得や自立を応援するプログラムも始まっています。 子どもを支えるためには、まずその親が心身ともに健やかでなければならない。「子ども未来」の支援には、そんなまなざしも大切にしています。

その4 めぐる想い

「僕も頑張ろう」–支援する、されるを超えて、想いがめぐる

「子ども未来」の活動は、「支援する人」と「される人」という一方通行の関係ではありません。そこには、関わる人みんなを巻き込んだ、温かい輪が広がっています。

その空気を一番よく感じられるのが、年に一度の「卒業パーティー」です。 支援を卒業する子どもたちや親御さんが壇上に立ち、感謝の気持ちや、これからの夢を語る晴れの舞台。 それは子どもたちの自信になるだけではありません。会場にいる支援者にとっても、「自分たちの活動は間違っていなかった」「応援してよかった」と心から感動できる、かけがえのない時間なのです。

ある支援者の方は、卒業生のこんな言葉を聞いて、胸が熱くなったそうです。

「みんなのおかげで勉強できている。それで行きたい学校に入れなかったら悔しいから、絶対がんばる」

自分を応援してくれる大人がいる。その温かさを肌で感じるからこそ、子どもたちは「だから僕も頑張ろう」と前を向くことができます。 そしてそのひたむきな姿が、大人たちに「また明日から頑張ろう」という勇気と活力をくれる。

ここではもう、「あげる側」と「もらう側」なんて境界線はありません。 お互いが想い合い、力を与え合う。そんな美しい循環が、確かに生まれていました。

おわりに:私たち一人ひとりに、何ができる?

お金だけでは、心までは救えない。 でも、「気持ち」や「つながり」だけでは、現実の厳しい壁は越えられない。 その両方がそろって、さらに周りの温かいコミュニティがあって初めて、子どもたちは「自分の未来」をもう一度信じることができるようになるのです。

最後に、この報告会を通じて私が受け取った「問い」をみなさんにも投げかけて、このレポートを結びたいと思います。

どんな境遇に生まれた子でも、自分の未来を自由に描き、夢を追いかけられる社会。 それを本当の意味で実現するというのは、どういうことなのか。 そしてそのために、私たち一人ひとりに、今、何ができるのでしょうか。

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