テレビ番組で料理をいただいて感想を伝える「食レポ」があります。すべてのレポーターはディレクターの指示、台本通り、たとえまずくても「美味しい」としか言えません。目くじらを立てるほどの事ではないですが、嘘っぽいですね。同じようなことが日常生活でも行われています。
私は色んなサークルに所属しています。講演会、鑑賞会、zoomでの会議等々。会の終了まぎはに参加者が今日の感想を発表しあう時があります。勿論良い内容の時の方が多いのですが、たまに「今日はスカ」もあります。その時「食レポ」方式で行くか、正直に表現するか決断が必要です。もし自分にうそをついて「良かった」と伝えれば、本人は気分が良いでしょう。でもこのままでいいんだと安心して、次回も同じミスをして成長が止まる可能性が高いです。多くの方は事を荒立てない、自己防衛のため「食レポ」になります。私も正直に感想を伝えると相手が「傷つくかも」と思い黙っているようにしています。でも司会者から指示されると自分に噓はつきたくない、本心を言いたくなります。だめですね、我慢が出来ません。もちろん、少し良い所を指摘してから、改善点を、「このようにされたらもっと良くなりますよ」と伝えるようにしています。周りから加平さんはたまに毒を吐くと思われているようです。
先日もある会合で私が30分、もう一人の方が30分話されました。彼は半分以上自慢話をされて、聞きたかったことは話されなかったので退屈していました。彼はいつも自慢話が多くて話も長い方です。感想タイムに入って指名しないでと思っていたら当てられました。表面的な話は嫌なので、正直に伝えてしまいました。私は発言が気になったので後日三人の方に感想を伺いましたら「よう言ってくれた」と返ってきました。これも「食レポ」かもしれませんが、彼の前でも「No」とは言わずに「Yes」と言っておられます。「和をもって尊し」なんですかね。「食レポ」のレポーターは強力なディレクターの影響下にあります。私達の「食レポ」は何に影響されているのでしょうか。人間は複雑です。
「『No』と言わない人の『Yes』は価値が低い」という言葉があります。もちろん「Yes」と言ってもらったら、嬉しい、やる気も向上しますが、その方の課題を上手に伝えることも大切です。私に対しても何でもかんでもほめてくれる人がいますがあまり嬉しくありません。「No」があってこそ「Yes」が生きます。本質をつく、中身のある関係性が好きです。「食レポ」はテレビの中だけで。
認定NPO法人「子ども未来」代表理事 辻本加平